
①任意交渉,②支払督促,③民事調停,④訴え提起前の和解,⑤訴訟提起とそれに伴う強制執行,その他担保権の実行という方法が考えられます。それぞれの手続ごとに特色があるので,その特色を把握した上で,どの方法によるのがあなたのケースにとって最も妥当なのかを探る必要があります。弁護士に相談して方法を検討してもよいでしょう。
任意交渉とは,直接債務者のもとに出向く,債務者に電話をかける,債務者に書面を出すなどの方法により,債務者に対して債務を履行するように働きかけることを言います。この請求により,次のような法律効果を期待できます。
任意交渉による請求には上記の法律効果がありますが,請求は直接口頭で行った場合,電話で行った場合,普通の郵便で行った場合は証拠として残らないため,上記の効果発生を証明できない場合があります。そこで,内容証明による請求をするべきです。
内容証明郵便とは,書面の内容を郵便局が5年間保管することにより,どのような内容の郵便を送付したのかを証明することができる郵便を言います。この内容証明郵便を利用することにより,債権者が請求した事実を証明することができます。なお,債務者がそのような郵便を受け取っていないと反論するのを避けるために,配達証明を付けるべきでしょう。内容証明郵便には,単に書面の内容を証明するだけではなく,債務者に次はさらに強力な法的手段を講じてくるのではないか,という心理的圧力をかける事実上の効果もあります。
支払督促とは,債権者が債務者の住所地の簡易裁判所の裁判所書記官に対して申立てを行うことにより,債務者に対して金銭の支払いを命じる制度のことです。通常の訴訟とは異なり,債権者の申立書を受理した裁判所は書面審査のみを行い,申立書に問題がなければ債務者に支払督促を送ってくれますので,申立人が裁判所に出頭しなくて済みます。また費用も訴訟の約半額ですみます。
簡易裁判所の書記官が,申立の内容を審査して要件を満たす場合に債務者に支払督促を発送します。支払督促の送達を受けた債務者は,受け取った日の翌日から2週間以内に異議申立てができ,異議申立てがあれば通常訴訟に移行します。異議申立てがなかった場合,債権者はそれから30日以内に、仮執行宣言の申し立てをし,裁判所書記官がその内容を審査した上で,仮執行宣言の付いた支払督促を債務者に送達します。これに対し,2週間以内に債務者が異議申立てをすれば,やはり通常訴訟に移行します。相手方が仮執行宣言付き支払督促に2週間以内に異議申立てをしない場合は,支払督促が確定し,判決と同じ効力を持って強制執行できることになります。
民事調停とは,簡易裁判所において裁判官の他に民間人2人以上が加わって組織された調停委員会が,必ずしも法律に拘束されることなく実情にあった解決をめざして当事者を説得し,当事者が合意することによりトラブルを解決しようとする制度です。調停においては必要に応じて証拠調べも行いますが,基本的に当事者の話し合い,譲り合いにより,トラブルを解決することを目的にしているので,例えば,債権者が債務者に対して分割払いを許すなどの譲歩をし,債務者が分割払い計画に従って弁済することを約束する,という形で民事調停で債権回収を図ることができます。
調停委員会は,調停を行う期日を決め,関係者に通知します。調停期日には,本人が出席してもよいですが,弁護士を代理人として出席させることもできます。調停期日においては,関係者から事情を聴取したり事実の調査や説得が行われ,調停委員会から調停案が示されます。通常の事件では,平均して3回ぐらいの調停期日が開かれ,話合いの結論が出ていることが多いようです。調停が成立した場合,調停調書が作成され,これは債務名義となりますので調停調書に基づいて強制執行を行うことができます。
訴え提起前の和解とは,当事者同士で話し合い既に和解(示談)ができている場合に,簡易裁判所でその合意を得ている内容を和解調書にする手続を言います。即決和解とも言います。あくまで既に和解が成立していることが前提です。和解調書は債務名義となりますので,債務者が和解の内容に違背した場合は,和解調書に基づいて強制執行をすることができます。簡易裁判所に対して申立てを行い,約1か月で期日が指定されるので,その期日に債権者・債務者が出頭し,調書を作成します。
債権者・債務者間で話し合いがついている場合は,訴え提起前の和解の手続によればよく,債務者が債務の存在を争っていない場合は,支払督促の手続によればよいでしょう。また,債務者が話し合い・譲り合いに応じてくれる見込のある場合は,民事調停の中で話し合いを試みるのもよいでしょう。
しかし,民事調停でも話し合いがつかない,あるいは内容証明郵便を送付しても債務者が支払いに応じない場合は,訴訟を提起し,勝訴判決を得て強制執行する他は難しくなります。債権額が60万円以下の場合は,比較的簡易な手続きである少額訴訟によることもできますが,60万円より債権額が大きい場合は,通常訴訟によらざるを得ません。そしてその場合は,弁護士に依頼して訴訟提起することになります。この訴訟で勝訴して判決が確定すれば,それを債務名義として強制執行できますので,強制執行により債権を回収します。
訴え提起して勝訴判決を得て,それが確定すると,確定判決が債務名義となり,強制執行することが可能になります。債務名義とは,債権者の給付請求権の存在を公証する文書をいい,確定判決のほか,仮執行宣言付支払督促,民事調停における調停調書,訴え提起前の和解における和解調書なども債務名義です。
例えば債務者所有の不動産に対し強制執行する場合は,その不動産の所在地を管轄する地方裁判所に不動産強制競売の申し立てをします。申し立てが法定の要件を満たしている場合は,裁判所が強制競売開始決定をし,不動産に差押登記をします。差押登記をされた不動産は,債務者による処分(売却など)が制限されます。その不動産は入札などの方法により換価され,換価された金銭が債権者に配当されます。
あらかじめ債務者の財産に担保権を設定している場合,その担保権を実行することにより債権を回収できます。担保権の実行にあたっては,裁判所に申し立てをし,差押,換価,配当という手続の流れをたどる点で,強制執行と同様ですが,担保権の設定が任意でされているので,担保権の実行は任意執行とも呼ばれます。担保権を実行するためには,担保権が存在しそれを証明する文書を提出する必要があります。不動産に抵当権を設定している場合は,その登記をした登記簿謄本を提出すれば足ります。また,被担保債権(担保権によって担保されている債権)が現に存在することが必要となります。